スキンシップをすることが、子どもに対して様々な影響を与えることは、多くの研究で明らかになっています。
今回は、スキンシップが赤ちゃんに与える影響について、まとめさせていただきます。
目次
スキンシップの重要性について

昔は「抱きぐせがつくから、抱っこはしすぎないほうがいい」ということも言われていましたが、赤ちゃんにとって「触覚刺激」はとても大切な感覚であり、産まれてから最初の数か月は赤ちゃんと触れ合う必要があります。
生後9週の赤ちゃんと親を5分間別々の部屋にいてもらったところ、赤ちゃんの額の温度が1℃近く下がったという研究があります。【小林登「赤ちゃんの心をサーモグラフィで測る―母子分離による顔面皮膚温度の変化と愛着」『周産期医学』第26巻、1号】
「親がそばにいるか」を感じており、親ではない人が同じ部屋にいても額の温度に変化は出なかったのです。
未熟な赤ちゃんが親から離れるということは生死に関わるため、本能的に恐怖を感じます。
スキンシップにより、神経伝達物質の放出が促進され、コルチゾール値を下げることでストレスホルモン値を低下させ、安らぎを感じるホルモン「オキシトシン」が脳から分泌を促す必要があります。
スキンシップにより「情緒安定」「脳の発達」という効果をもたらします。
スキンシップをする時は子どもに注意を向けていないと効果が半減します。
例えばスマホを打ちながらおっぱいを飲ませていると、オキシトシンが十分に分泌されないことが分かっています。
しっかりと愛情を伝えながらスキンシップをしましょう。
スキンシップが不足するとどうなってしまうのか
スキンシップの人体実験として、有名な話があります。
今からおよそ800年前、ローマ皇帝フリードリヒ2世が50人の生まれたばかりの赤ちゃんを集めさせ、乳母たちには、下記の条件で赤ちゃんの世話をするように指示しました。
- 目を見てはいけない
- 笑いかけてはいけない
- 話しかけてはいけない
生きるための世話をする一方で、スキンシップの一切を禁止しました。
すると、50人の子どもたち全員が、1歳になる前に死んでしまったのです。
その後、アメリカの心理学者ルネ・スピッツも、戦争で孤児になった乳児55人に対し、スキンシップを一切行わない実験をしました。
- 27人:2年以内に死亡。
- 17人:大人になる前に死亡。
- 11人:大人になっても知的障害・情調障害が残った。
これらのことから、スキンシップの重要性がわかるかと思います。
スキンシップが与える効果① 情緒安定

スキンシップにより脳から分泌される「オキシトシン」は、情緒を安定させる効果があります。
この効果は、子供に対してだけではなく親に対しても同様の効果をもたらすため、産後鬱などの予防にも不可欠です。
さまざまな研究から、「こっちを見て」と注意喚起して泣く赤ちゃんを放置することで赤ちゃんに強いストレスがもたらされること、また「スキンシップ」が重要であることが証明されています。
スキンシップが与える効果②脳の発達

安らぎを感じるホルモン「オキシトシン」が脳から分泌され、情緒が安定することを上述で示しましたが、「信頼のホルモン」と呼ばれる神経伝達物質「オキシトシン」は赤ちゃんとの関係性を深めるのにとても大切です。
「新生児模倣」と呼ばれる「親の表情のマネをする」ようになるには、信頼性が欠かせず、赤ちゃんの脳の発達にも重要です。
医療的なスキンシップ「カンガルーケア」について

- NICU等で行われる早産児に対するカンガルーケア
- 正期産での出生直後のカンガルーケア
に大別されます。
NICU等で行われる早産児に対するカンガルーケア
NICU等で行われる早産児に対するカンガルーケアは、極低出生体重児(出生体重1500g未満)を対象に、母親の乳房の間で裸の皮膚と皮膚を接触させて哺育を行うケアです。
- 体温維持
- 血糖値安定
- 呼吸安定
- 循環器安定
- 啼泣時間短縮
- 体重増加
- 母親の未熟児出産による喪失感克服
などを目的として、医療行為の一環として実施されます。
正期産での出生直後のカンガルーケア
カンガルーケアには、上記で示して効果のほかに、
- 母乳分泌増加
- 母乳期間延長
- 母子愛着形成
まとめ
スキンシップが赤ちゃんに与える良い影響についてまとめさせていただきました。
残念ながら、内閣府子ども・子育て白書によると、親子の平均的接触時間は減っており、子どもと触れあい、ゆっくり会話をするといった時間は減ってしまっています。
子どもと触れ合い・関わる時間を増やしてあげることが、子どものため・親のためになりますが、ご自身のペースで育児を出来る範囲で良いものにしていきましょう。







