妊娠中期とは妊娠5ヵ月~妊娠7ヵ月(妊娠16週~27週)で、安定期に入るこの頃には、お腹もだいぶ目立つようになってきます。
妊娠後期とは妊娠8ヵ月~妊娠10ヵ月(妊娠28週~39週)を表します。
この妊娠中に摂取すべき栄養素として、
- 葉酸
- 鉄分
- タンパク質
- ビタミンD
などが挙げられると思います。
その中でも今回は、「鉄分」についてまとめさせていただきます。
目次
妊娠中期・後期に摂取すべきおすすめ栄養素について 〜鉄分〜

赤血球を作るために最も重要な栄養素は「鉄」で、赤血球に多く含まれる「ヘモグロビン」をつくるのに欠かせません。
妊活・妊娠中では、特に鉄が多く必要となるのは赤ちゃんが大きくなってくる妊娠中期から後期です。
赤ちゃんの体・臍帯・胎盤に鉄を貯蔵したり、循環する血液量が約1.5倍に増加するため赤血球の量も多く必要になります。
また、授乳中も母乳を通して赤ちゃんに鉄を与えるため、出産後にも重要な栄養素です。
必要摂取量

厚生労働省では貧血を防ぐために、妊娠初期では非妊娠時の+2.5(mg/日)、妊娠中期・後期では非妊娠時の+15.0(mg/日)の鉄分摂取を推奨しています。
具体的には妊娠中期・後期は
21.0mg/日(18-29歳)・21.5mg/日(30-49歳)
の鉄分が必要です。(「日本人の食事摂取基準(2015年版)」より)
鉄分が不足した場合

赤ちゃんに栄養を運ぶために自然と血液の量が増えますが、血漿は増えても赤血球が増えないので血液が薄くなり、ヘモグロビン濃度やヘマトクリット値が低下し、貧血になりやすくなります。
ヘマトクリット値は、全血に対する赤血球の割合のことです。
妊娠中に起こる貧血のほとんどは、鉄の不足による鉄欠乏性貧血・葉酸の不足による葉酸欠乏性貧血、あるいはその両方が合併したものです。
摂取した鉄は優先的に赤ちゃんへと運ばれるため、母体が貧血気味であっても、赤ちゃんが栄養不足に陥ることは滅多にありません。
それでも、貧血が重症化してしまうと、赤ちゃんの発育不良・低出生体重児・未熟児・早産・胎児死亡になりやすくなることがわかっています。
妊婦さんの場合、「ヘモグロビンが11.0g/dl以下」を貧血としています
お産の際には平均でおよそ300mlの出血を伴うため、出産後に症状がひどくなる可能性があります。
また、母乳の原料は血液であるため、産後の母乳の出が悪くなることもあります。
母乳に含まれる鉄は乳児によく吸収され、母乳中の鉄の50%超を利用できるのに対し、乳児用調製粉乳では12%未満しか利用できません。
これらより、母体の鉄はとても重要といえます。
鉄欠乏症の兆候として以下のものがありますので、これらには気をつけましょう。
- 疲労感および無力感
- 作業能率の低下
- 体温維持能力の低下
- 免疫機能低下による易感染性の増大
- 舌炎(舌が赤く腫れる)
鉄の種類について

鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。
- ヘム鉄;動物性食品
- 非ヘム鉄;植物性食品
ヘム鉄は吸収率15~35%、非ヘム鉄は吸収率は2~20%であり、ヘム鉄が吸収率が良いです。
ヘム鉄は比較的吸収が良いですが、エネルギー・タンパク質・脂質の取りすぎになってしまいます。
大豆製品や野菜にも鉄分は含まれており、これらを組み合わせることによって、効果的に摂取する必要があります。
また、ビタミンCは鉄分の吸収をよくするため、ビタミンCを多く含む食材との組み合わせも必要です。
ヘム鉄
ヘム鉄は、タンパク質と結合した鉄で、肉や魚などの動物性食品に多く含まれます。
特殊な担体によってそのままの形で腸管に吸収されます。
非ヘム鉄
非ヘム鉄は、無機鉄で、植物性食品に多く含まれます。
コーヒー・紅茶・緑茶などに含まれるタンニン・玄米等の穀類の外皮や豆類に多く含まれるフィチン酸は、非ヘム鉄の吸収を阻害すると言われています。
鉄を多く含む食べ物
引用:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
ヘム鉄は動物性食品に、非ヘム鉄は植物性食品に、それぞれ含まれています。
<動物性:ヘム鉄>
- 鶏レバー
- 豚レバー
- 牛レバー
- 赤肉
- 牡蠣
- かつお
- 煮干
- 卵
<植物性:非ヘム鉄>
- 納豆
- インゲン豆
- 豆腐
- 小松菜
- ほうれん草
しかし、レバーなどは過剰摂取すると奇形発生リスクが高まるビタミンAも大量に摂取してしまうので、注意が必要です。
また、かつおなどの大型回遊魚は水銀の心配もありますので、注意が必要です。
サプリの紹介
1日約21mg摂取する必要があり、ほうれん草(ゆで)で摂取しようとすると1日約2kgを食べる必要があります。
そのため、鉄欠乏症や貧血の兆候があるならば、サプリで補いながら鉄を摂取する必要があります。
注意点
鉄が体内に過剰に蓄積して肝硬変や心不全などの臓器障害を引き起こすことがあります。
鉄欠乏性貧血を治療するための鉄サプリメントによって、悪心、嘔吐、便秘、下痢、暗色便、または腹部不快感などの消化器系の副作用を生じることがあります。
推奨量の半分量から始めて、徐々に全量まで増やすことによって、副作用を最小限に抑えられます。
まとめ
妊娠中期・後期に摂取すべきおすすめ栄養素における鉄分について、まとめさせていただきました。
妊婦さんに必要な栄養素について学び、安心して出産に挑みたいと思います。
妊娠中に鉄分以外にも摂取すべき栄養素がたくさんあります。
それらについては以下をご参照ください。








