妊娠初期とは、主に妊娠判明の時期である妊娠5週から妊娠15週までを表すことが多いです。
- 妊娠2ヶ月で胎のうが確認でき、胎芽期となります。
- 妊娠3ヶ月の8週0日以降、胎芽は胎児と呼び名を変えます。
- 妊娠4ヶ月の15週になると、胎盤が完成します。
妊娠初期は、胎児の器官形成期ですので、摂取すべき栄養に気をつけなければなりません。
妊娠中に摂取すべき栄養素として
- 葉酸
- 鉄
- タンパク質
などが挙げられると思います。
その中でも今回は、妊娠初期に最も必要かつ摂取しずらい「葉酸」についてまとめさせていただきます。
目次
妊娠初期に摂取すべきおすすめ栄養素について 〜葉酸〜

葉酸とは、「水溶性ビタミンB群の栄養素」の1つで、赤血球を作り出し、DNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の生合成を促進し、細胞の生産や再生を助けることから、体の基礎を作るために重要な役割を果たします。
水に溶けやすく尿などで体外に排出されやすいため、水溶性ビタミンは体内で蓄積されにくいので、毎日摂取することが必要です。
しかし、葉酸は熱に弱く水に溶出しやすいため、50%〜85%ほどが調理により失われてしまいます。
そのため、葉酸がたびたび妊婦で不足することがあります。
葉酸が不足した場合

妊娠初期(4週〜12週)に葉酸が不足した場合、神経管閉鎖障害の発症リスクが高くなる可能性があります。
神経系は妊娠7週間ほどで盛んに形成されます。
神経障害によって先天的に運動障害や機能障害が起こったり、脳が形成されない無脳症による死産や流産の可能性が高まります。
また、母乳の材料は血液であり、授乳期に葉酸が血液を作るのを助けるため、貧血になりやすくなります。
そのため、厚生労働省でも妊娠前や妊娠中に葉酸摂取が推奨されています。
葉酸を多く含む食物

葉酸を多く含む食物は上記の表のようなものが挙げられます。
上記の表以外にも、レバー・うなぎなども挙げられますが、過剰摂取すると奇形発生リスクが高まるビタミンAも大量に摂取してしまうので、省いています。
葉酸サプリの紹介

妊活中や妊娠初期の女性は栄養バランスが偏りやすく、葉酸の栄養が欠乏する傾向があるため、推奨摂取量を守った上で、積極的に葉酸サプリを摂取する必要があります。
ここで気をつけるべきなのは、食事とサプリに含まれる葉酸が違うということです。
食事ではポリグルタミン酸(天然葉酸)、サプリではモノグルタミン酸(合成葉酸)を摂取できます。
ポリグルタミン酸(天然葉酸)は体内への吸収率約50%、モノグルタミン酸(合成葉酸)は吸収率約85%になります。
ポリグルタミン酸は消化管の酵素でモノグルタミン酸に分解されて、体内に吸収されるため、ポリグルタミン酸が分解されたあとのモノグルタミン酸のほうが吸収率が高くなります。
そのため、サプリでの摂取が推奨されています。
葉酸摂取の推奨量

『日本人の食事摂取基準(2015年版)』(厚生労働省)より葉酸の推奨量が規定されています。
葉酸の1日の摂取の推奨量を18歳以上の男女ともに食事により240㎍とされています。
さらに、妊娠を計画している・妊娠している女性は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減するために、サプリによるの追加摂取が推奨されています。
- 妊活〜妊娠3ヶ月 食事:240μg サプリ:400μg
- 4ヶ月〜出産 食事:240μg サプリ:240μg
- 出産後授乳期 食事:240μg サプリ:100μg
葉酸は小腸で吸収され生体内システムで利用され、MTHFR (メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)という酵素が関わっています。
この酵素の活性は個人のMTHFR遺伝子によって決められており、日本人女性の6割以上にMTHFR遺伝子に変異があるといわれているため、葉酸が小腸で吸収されても、生体内システムでは上手く利用できない体質かもしれません。
そのため、推奨量以上を摂取する必要があるとも言われています。
葉酸摂取の上限
上限値について、男女ともに18~29歳で900㎍、30~69歳で1000㎍、70歳以上で900㎍の耐容上限量が設定されています
葉酸は水溶性のため不要な分は排出されるので、神経質に上限値を気にする必要はありません。
仮に推奨量を超えてしまった場合でも、5000μg/日の葉酸摂取で副作用がないという研究値に安全係数をかけて設定されています。
しかし、ビタミンB12が不足している人が、葉酸を過剰に摂取すると、ビタミンB12欠乏による大赤血球性貧血の発生を隠してしまい、ビタミンB12欠乏による重篤な疾病である後外側脊髄変性の発見が遅れる危険があります。
まとめ
妊娠初期に摂取すべき栄養素である「葉酸・鉄・タンパク質」の中から、葉酸について、紹介させていただきました。
妊婦さんに必要な栄養素について学び、安心して出産に挑みたいと思います。
妊娠中に葉酸以外にも摂取すべき栄養素がたくさんあります。
それらについては以下をご参照ください。







