幼児期教育によって、獲得が容易になる能力がいくつかあることが知られています。
その中でも、「絶対音感」の能力獲得は、幼児期に実施しないと大人になってからでは難しいとされています。
子どもが音楽の道に進みたいと思ったときに、獲得できていないと辛い思いをするかもしれれないと感じたので、獲得に向けた環境づくりをしていきたいです。
そのため、絶対音感をどのように子どもに獲得させるべきか、調べ上げたことをまとめさせていただきます。
目次
絶対音感とは?

絶対音感とは、どういうものであるか理解しなければなりません。
絶対音感とは、外的基準音との比較なしに任意の音の音高を特定できる、あるいは指定された音高を生成できる能力のことです。
別の表現では、「固定ド」と呼ばれ、主音であるハ長調のドが、どの長調であってもドに聴こえます。
英語では、“absolute pitch“と呼ばれます。
それに対して、相対音感というものがあり、外的基準音との比較によって、任意の音の音高を特定できる、あるいは指定された音高を生成できる能力のことです。
別の表現では「移動ド」と呼ばれ、ハ長調のドがヘ長調ではソに聞こえます。
また、音高2次元論という考えがあり、 音高には, 周波数に対応して連続的・直線的に変化して いく「ハイト(tone height)」という特性と、音名と対応したカテゴリカルな「クロマ(tone chroma )」という特性があり、絶対音感は「クロマ」を特定することができる能力のことであるとしています。
なぜ絶対音感の幼児期教育が必要なのか?

生まれたばかりの新生児の脳は、1年後に約2倍、3年後に約3倍の大きさになります。
そして、大脳生理学上6才までに成人の約90%までに成長し、残りの10%は20歳位まで緩やかに成長していき脳が完成します。
それは機能・知性ごとに盛んに神経回路の製作・破壊・組替が実施される時期【臨界期・感受性期】が、幼児期に集中しているからです。
臨界期にちょっと練習をするだけでごく自然に簡単に出来るようになりますが、この臨界期に、「適切な教育」が無いと、その後の人生においてその機能・知性の獲得に大きな障害になってしまいます。
絶対音感の臨界期は、6歳までだと様々な研究から結論づけられています(Baharloo,S.,Service,S.k.,Risch,N.,Gitschier J.,&Freimer,N.B.2000 Familial aggregation of absolute pitch.American Journal of Human Genetics, 67,755-758.)。
また、6歳半までに訓練を開始することが必須であり、7歳を超えると取得が著しく困難であることが述べられています(江口寿子 1991 絶対音感プログラム 全音楽譜出版)。
これらの観点から、絶対音感獲得について、幼児期において絶対音感を養うための訓練が必須だと言わざる終えません。
相対音感については、成人してからも取得可能な事例も多いです。
絶対音感を獲得する必要性はあるのか?

正確な絶対音感を持つ割合は、北米の音楽大学では5〜10%程度と少ないが、日本・中国の音楽学校では50%もあると示されています。(宮崎謙一,絶対音感に関する誤解,日本音響学会誌69巻10号(2013). pp.562-569)。
音楽をやっていくで有利な能力であることは確かですが、半数であるため必須であるとは言い難いです。
また、絶対音感は、音楽に対する心理的に再構成する認識力・歌の内容への自己投影・歌詞の共感的理解などの音楽教育本来の目的を阻害するという指摘があります。
音楽性とは、リズム感・音程感・テンポ感・フレーズ感・感情表現など幅広い意味があり、絶対音感ではその一部について理解できる能力に過ぎないことへの理解が大事です。
絶対音感を獲得していると、楽譜に書かれた音符・記号を音として羅列するのみで、再現技術の高さのみを誇示し、正しい音を復元することだけである間違いを犯しやすい傾向にもあります。
しかし、絶対音感の必要性について懐疑的な部分はありますが、絶対音感を獲得していても音楽的に優れた人もいるのは事実です。
絶対音感に過信せず、音楽表現について真摯に向き合える環境づくりができる場合には、絶対音感が有効に利用することが可能になると思います。
絶対音感の音楽的側面以外について
音楽の才能以外にも有益な点があります。
1995年、アメリカの科学誌であるScience誌に、絶対音感を持つ音楽家の左脳が普通の人の左脳よりも大きいという内容の論文が掲載されました。
左脳は論理、理性、言語をつかさどっている部分だと言われており、空間認識や数学的な能力が高い子どもも多いと言われています。
絶対音感を身につけた子どもたちが集中力、記憶力に目覚ましい変化が起こるのも無関係ではないことが、『子どもがどんどん賢くなる「絶対音感」の育て方』(鬼頭敬子著、青春出版社で説明されています。
具体的な絶対音感取得方法

絶対音感取得のための有名な訓練法は、ピアノを用いて音階を答える練習方法です。
音名や階名は一切使用しないことが正しい絶対音感を身につけるために大事であることがわかっています。
どのような手法があるかを調べると、
- 江口式:聴いた音に対して色分けされた旗を上げる方法・和音判別
- 鬼頭流・七田式:音階がイラストされたカードから選択する方法・単音判別
が主流のようです。
双方に良い点悪い点がありますが、「江口式」が好評のようです。
学術的に効果が認められた訓練法は、「江口式」だけでした。
そのため、「江口式」を選択したいと思いました。
和音判別訓練法による絶対音感習得
和音判別訓練法では 3〜4歳時に訓練を開始することが一般的であり、全体の約9割がこの年齢に開始するとされています(江口寿子 1991 絶対音感プログラム 全音楽譜出版)。
ドミソであれば赤の旗を上げ、ドファラであれば黄色の旗を上げる方法で訓練します。
特徴としては、
- 訓練成功率が90%以上であること
- 訓練効果の持続性が確認されていること
- 訓練法の詳細が公開されていること
が挙げられますが、最大の特徴は訓練刺激による単音ではなく和音を使用する点です。
和音判別訓練法にて、絶対音感が獲得されていると判断されるのは、白鍵音9和音判別・黒鍵音5〜15和音判別できるようにならなければなりません。
取得期間には、白鍵音和音判別には約1年〜1年半、黒鍵音和音判別には約半年〜1年半、合わせた音にでは約2年〜4年もの歳月が必要になります。
自分で教えるべきか?教室に入れるべきか?
江口寿子氏の『絶対音感プログラム』を読んで、絶対音感の訓練について勉強することができます。
それを用いて、自宅で訓練できるとは思いました。
ピアノなどの音程が固定された楽器を用いて、正しい音を教える必要があります。
しかし、調律が合っていないと、正しい音高を教えることができません。
家で教えることができるかもしれませんが、音楽教室で習得する方が無難だと思われます。
30問を1回とカウントし、一日で4〜5回と高頻度な練習を求められることもあり、音楽に関わっていた親であるならば、自宅でも訓練はできるかもしれません。
私の場合は、絶対音感を獲得できていませんし、正しい音を確実に教えられるか自信がありませんので、絶対音感取得コースがある音楽教室に通わせようと思いました。
まとめ
絶対音感について、調べたことをまとめさせていただきました。
絶対音感を子どもに獲得させようと思う私の場合は、「3歳頃に江口式を実施している音楽教室に通わせる」という結論に至りました。
個人的な情報収集に基づく意見でありますが、考えの参考になるなどお役に立てれば幸いです。




